睡眠は日中活動した脳と身体を十分に休息させるための時間です。私たちは人生の約3分の1を寝て過ごしていますが、寝ている間に呼吸停止が繰り返されると脳や身体には大きな負担がかかっていることになります。
- 日中に眠気を感じる
- 居眠りをよくする
- 朝の目覚めがすっきりしない
- 熟睡感がない、理由もなくだるい
- 何時間寝ても眠い
- 夜間、何回もトイレに起きる
- 夜間、何度か目を覚ます
- いびきがうるさいといわれる
- 朝起きると頭が痛い
- 寝汗をかく
- 寝相が悪い
- 記憶力や集中力が落ちてきた
- 精神的に不安定になる
※上記の質問に3つ以上当てはまった方は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
禁煙できない、寝る前の飲酒が習慣化している、暴飲暴食で肥満気味、高血圧・糖尿病・高脂血症の既往がある、いびきをかいているといわれる、日中の眠気や倦怠感、朝方の頭痛、夜間頻尿、首が短い、脂肪がついていて首が太い、下あごが後方に引っ込んでいる、歯並びが悪い、舌や舌の付け根が大きい
…など
生活習慣病の発症や体型が変化しやすく、年齢と共に喉や首まわりの筋力が衰えることもリスクを高める一因となります。20歳の頃と比べて10㎏以上太った方は、首や喉まわりの脂肪が増えて気道を狭くしている可能性がありますので注意しましょう。
男性罹患率が高いのは、男性特有の脂肪のつき方や体型が関係しているといわれています。但し、閉経後の女性はホルモンバランスの変化によって罹患率が高まるため、注意が必要です。※女性ホルモン(プロゲステロン)には上気道開大筋の筋活動を高める作用があり、閉経によってホルモンバランスが崩れると『いびき』の頻度が高まるといわれています。
睡眠中に10秒以上呼吸が止まることを『無呼吸』と呼び、無呼吸にはなっていないが
もう少しで止まりそうな弱い呼吸のことを『低呼吸』と呼びます。
『いびき』は狭くなった気道を何とか空気が通過した時に発する音で、気道が狭くなっていることを知らせる重要なサインです。
呼吸運動は保たれているが上気道のどこかの閉塞によって鼻・口の気流が停止します。
《上気道が狭くなる要因》
首・喉まわりの脂肪沈着、扁桃肥大、舌の付け根・口蓋垂(のどちんこ)・軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)などによる喉・上気道の狭窄 …など
脳にある呼吸の司令塔の機能異常が原因として考えられ、脳の呼吸中枢から信号が送られないことによって呼吸運動そのものが停止します。閉塞性の無呼吸とは違い、呼吸しようとする努力がみられません。また、純粋な中枢性ではいびきをかきません。
血液中の酸素濃度(動脈血酸素飽和度(SpO2))は正常で96%以上ですが、無呼吸になると90%以下にまで下がります。これは呼吸不全の場合と同じく、酸素吸入を必要とする状態で身体にとっては非常事態!この時、心臓が反応して心拍数を上げ、身体中に十分な酸素を供給しようとするために血圧が上がります。つまり、無意識のうちに日中運動をしている時と同じような負担が心臓にかかっているといえます。毎晩1時間に何回か、そして何年もこの非常事態が繰り返されれば、心臓に蓄積する負担は計り知れません。
高血圧症、脳卒中、心不全、不整脈、狭心症、心筋梗塞、突然死 …など
- 簡易検査:パルスオキシメーター
睡眠中の血液中の酸素濃度を測定します。
→酸素濃度の低下の程度により精密検査をします。 - 精密検査:携帯型ポリソムノグラフィー
簡易検査の血液中酸素濃度に加え、無呼吸と低呼吸の程度を調べます。
→無呼吸・低呼吸指数により治療方針を決定します。
正常 | 軽症 | 中等度 | 重症 |
---|---|---|---|
<5 | 5≦AHI<15 | 15≦AHI<30 | 30≦ |
飲酒制限、禁煙、睡眠薬使用の制限、肥満者は減量、鼻疾患の治療など、生活習慣の改善によって良くなることもあります。生活習慣の改善だけでは十分な改善が見られない場合は、口腔内装置や持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)などを行います。
口腔内装置(マウスピース療法)下あごが少し前方に出るようなマウスピースを作製し、夜間装着して寝てもらう治療法です。下あごが前方に移動することで気道が広くなるため、軽症~中等度の閉塞性の方は改善が期待できます。
無呼吸・低呼吸指数が20以上の閉塞性の場合に対象となります。気道に空気の圧力を持続的にかけ、舌の根元が沈み込んで気道を閉塞するのを予防する治療法です。設定した一定の圧力の空気が専用マスクを通して送られてきますが、それほど強い圧力ではないため、慣れてしまえばふつうに眠ることが可能です。
CPAP療法は、無呼吸を減らすだけでなく、高血圧の改善、不整脈の減少、交感神経の働きの抑制、糖尿病の改善などの効果があり、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの発症を押さえて睡眠時無呼吸症候群の経過をよくすることがわかっています。
専門の医師のもと治療をすることで症状が改善し、睡眠の質が向上している方もいます。症状が悪化する前に現在の睡眠状態を調べてみませんか。