物忘れには『加齢による物忘れ』と『病気による物忘れ』とがあり早期診断が重要です。病気による物忘れでも適切な治療を行うことによって、予防や症状の改善、進行を遅らせるなどの対応が可能となる場合もあります。専門的な知識と見立てが重要ですので、自己判断で終わりにせず、一度ご相談ください。
認知症 セルフチェック
次のチェックリストであてはまるものにチェックを入れてください。
質問項目 | ほとんどない | 時々 ある |
頻繁 にある |
1 同じ話を無意識に繰り返す |
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2 物の名前が出にくい、知っている人の名前が思い出せない | |||
3 置き忘れやしまい忘れが多くなった | |||
4 漢字を忘れる | |||
5 今、何をしようとしていたのか忘れる | |||
6 器具等の説明書を読むのが面倒になった | |||
7 理由もなく気がふさぐ | |||
8 身だしなみに無関心になった | |||
9 外出を億劫に感じる | |||
10 物(財布など)が見当たらないことを他人のせいにする | |||
あなたの合計点は 0 点 | 結果はこちら |
セルフチェックはあくまでも目安です。様々なテストや画像検査の結果より総合的に診断します。
セルフチェックの結果
0〜8点 正常!
物忘れも老化現象の範囲内です。疲労やストレスによる一時的な症状の場合もあります。 8点に近いようでしたら、気分の違う時に再チェックしてみましょう。
9〜13点 要注意!
家族に再チェックしてもらうか、数か月単位で間隔をあけて再チェックすることをお勧めします。予防対策を取り入れるなど生活改善をしてみましょう。
14〜20点 要診断!
初期症状が出ている可能性があります。家族にも再チェックしてもらい、結果が同じであれば、外来への受診をお勧めします。
セルフチェックの注意点
要注意や要診断となった方は、認知症予備軍である可能性もありますが、心配性の人が自分に厳しく採点してしまったということも考えられます。
また、すでに認知症になっている場合には本人にはその認識がないため、自己チェックしても甘くなってしまう可能性もあります。
セルフチェック以外で、気になっていることはありませんか?
物忘れがひどい |
判断・理解力が衰える |
・切ったばかりなのに電話の相手を忘れる | ・料理、片付け、計算、運転などミスが増えた |
・しまい忘れ置き忘れが増え、常に探している | ・新しいことが覚えられない |
人柄が変わる | ・話のつじつまが合わない |
・些細なことで怒りっぽくなった | ・テレビ番組の内容が理解できなくなった |
・周りへの気遣いがなくなり頑固になった | 不安感が強い |
・自分の失敗を人のせいにする | ・一人になると怖がったり寂しがったりする |
・この頃様子がおかしい!と周囲から言われた | ・外出時、持ち物を何度も確かめる |
時間・場所がわからない | ・「頭が変になった」と本人が訴える |
・約束の日時や場所を間違えるようになった | 意欲がなくなる |
・慣れた道でも迷うことがある | ・趣味や好きなテレビに興味を示さなくなった |
注)上記の項目は早期発見の目安であり、医学的な診断基準ではありません。
診察当日の内容
- 症状の経過を聞き取る問診
- 専門の医師による診察
- 記憶障害などの程度を調べる神経心理検査
- 脳の状態を調べる画像検査
- 必要に応じて血液検査や心電図検査
物忘れの原因には、様々な病気が潜んでいます!
・アルツハイマー型認知症 | ・レビー小体型認知症 | ・前頭側頭葉型認知症 |
・脳血管性認知症 | ・慢性硬膜下血腫 | ・正常圧水頭症 |
・脳炎 | ・髄膜炎 | ・パーキンソン病 |
・甲状腺機能低下症 | ・梅毒感染症 | ・脱水 |
・ビタミン欠乏症 | ・栄養障害 | ・肝硬変 |
【 アルツハイマー型認知症 】
認知症の半分以上を占め、男性よりも女性に多い認知症です!
脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり正常な神経細胞が壊れて、脳の萎縮が起こることが原因と言われています。特殊たんぱく質が蓄積する原因については明確なことはわかっていません。発症には加齢や遺伝が関係していることは明らかでしたが、近年では糖尿病や高血圧などの方は、そうでない方よりもアルツハイマー型認知症になりやすいことが科学的に証明されました。そのため、予防には生活習慣の改善が重要であるとされています。
記憶障害がでる何年も前から、脳の異変は起きています!
忘れていることを忘れてしまいます。
食べた夕食の内容を忘れるのではなく、
先ほど夕食を食べたこと自体を忘れてしまうといった症状がみられます。
徐々に現在と過去の区別がつかなくなります。
近い時期の記憶からなくなっていき、過去の記憶は比較的 残りやすいです。症状として代表的なものは徘徊症状です。 尿意や便意が分からなくなり、失禁が目立つようになります。
脳の萎縮がさらに進行し、言葉数も意味も失われ、やがては話が通じなくなります。食事に集中できないため介助が必要となり、歩行の緩慢、姿勢の前倒、左右どちらかに傾いたりします。やがて寝たきりとなり、上下肢の関節が拘縮、嚥下障害による栄養不良と誤嚥性肺炎が起こりやすくなります。
【 脳血管性認知症 】
アルツハイマー型についで多く、認知症の約20%を占めています!
男性の方が女性よりも多く発症している認知症で、よくなったり悪くなったりを繰り返して進行します。多発性脳梗塞などで小さな脳梗塞が何度も起きている場合、脳梗塞が起きる度に症状が悪化していきます。また障害を起こした脳の場所によって、起きる症状が変わってきます。
血管障害は生活習慣病が原因で引き起こされるため、高血圧、高脂血症、糖尿病などにならないようにする事が予防に繋がります。また原因となる脳血管障害を早期に治療してリハビリを行うことで、症状の進行を抑えることも可能です。
意欲低下や自発性低下、夜間の不眠や不穏が目立ち、症状の変動が激しいことが多く、影響を受ける脳の部位が限られているため、できることとできないことがはっきりしていることが特徴です。
非常に小さな脳梗塞や脳出血が起こった場合は、自覚症状がない場合や感じてもふらつきやめまい程度であまり気がつかないことがあります。
脳血管性認知症は脳血管疾患が原因なので、発作が起こる度に症状が段階的に重くなります。ダメージを受けた脳の部位によって出る認知症の症状が異なるため、記憶障害がひどい一方で判断力は保たれているという「まだら認知症」がみられるのも特徴です。脳血流が少なくなる事が原因なので、認知症の症状が日ごとに大きく変わります。
※ まだら認知症
認知症の種類ではありません。
物忘れが目立っても判断力や理解力などは
低下していないことが多く、 同じことをしても
できる時とできない時が繰り返し 起きたりする状態のことをいいます。
【 レビー小体型認知症 】
レビー小体というたんぱく質が脳にたまることで起こる脳の萎縮が原因だと言われていますが、なぜ異常なたんぱく質がたまるのかは、未だ解明されていないのが現状です。このたんぱく質はパーキンソン病の原因にもなるやっかいな存在で、認知症を伴うパーキンソン病と言われる症状は実はこのレビー小体型認知症だということも最近分かってきました。
認知機能障害も変動しやすく、良いときは話が通じるが、悪くなると話も周りのこともわからなくなるため、気分や態度、行動がころころと変わります。体の動きが緩慢になるパーキンソン病に似た症状で、歩行障害や体の硬さを伴うため、転倒しやすくなります。幻視として色がついた鮮明な人、動物、虫などが昼夜問わず出現、映像に加えて幻聴も発生したりします。睡眠時夢に合わせて踊る、手足を動かす、歩いたりするなどの行動も症状です。
【 前頭側頭型認知症 】
多くは初老期に発症。現在、ピック球という異常構造物が神経細胞にたまる場合とTDP-43というたんぱく質がたまる場合、が発見されていますが原因はわかっていません。10年以上かけてゆっくり進行することが多いです。
人格や性格が極端に変わる、清潔保持や衛生面の管理ができない、柔軟な思考ができない、反社会的な行動が増えるなど性格の変化があります。また、決まった時間に同じ行動を繰り返さないと不機嫌になる、その場と関係ない言葉を繰り返す、物の名前が意味する事がわからなくなり、言葉が段々とでなくなるなどの症状があります。
【 皮質基底核変性症 】
40歳代から80歳代に発症し、ピークは60歳代。脳では前頭葉と頭頂葉に強い萎縮が認められます。ゆるやかに進行するため、発症後寝たきりになるまでの期間は5~10年が多いようです。
【 進行性核上性麻痺 】
40歳以降で、男性に多く大部分の人は50歳代~60歳代に発症。
認知症状が初期に出ることがあります。
【 正常圧水頭症 】
初老期に発症しやすいですが、治療可能な認知症です。
特徴は、自発性、意欲の低下と注意力障害が中心です。呼びかけや問いかけに対し反応が遅くなり、注意力が持続しないため、すぐに飽きてしまいます。歩行が不安定になり、一日中テレビを見ている、ボーとしていたりするなどの状態が多くなります。
【 進行麻痺 】
脳の梅毒です。梅毒に感染してから10~20年後に認知症症状を発症し、放置すると進行性の経過をたどり死に至ります。
【 アルコール性認知症 】
アルコールは神経毒であり、長期・大量に飲用すると神経細胞が死滅し、認知症となる可能性も考えられます。特にアルコール度の強い蒸留酒を長期飲用すると、記銘力障害、失見当識、作話症を呈する場合があります。
【 身体疾患に伴う認知症 】
身体の様々な内臓疾患が直接、間接に脳に影響を及ぼし、認知症を引き起こすことがあります。
例)肝硬変:血液中にアンモニアが増えることで脳を破壊し、認知症を生じさせます。
甲状腺機能低下症:ホルモンが不足すると脳の代謝が低下し、認知症を呈します。
重い貧血、心疾患、肺疾患、脱水、ビタミン欠乏症 などでも認知症を起こします。
思い過ごしで良かったと思えばよいのです。
早く気付いて受診する事こそが、症状の悪化を防ぎます!
よりよい環境で適切な治療やケアを行うことで症状が改善している方もいます。また、ご本人やご家族に合ったサービスが受けられる場合もありますので、気になっている事や不安に感じている事、今までとは違う言動や行動に気がついたら、躊躇せずにお気軽にご相談ください。