新型コロナウイルス感染症の出現から丸3年が経とうとしています。 ようやくこの秋、縮小版ではあるものの《わかば祭》再開に漕ぎ着けました。ほっとしたのも束の間、残念なことにまたコロナ第8波が猛威をふるいそうな現在11月半ばです。 まだまだコロナ禍を抜けきることはできなそうですが、『我々わかば職員一同、多彩なジャンルの専門家集団として、こんな冬の時代でも入院患者さんにこころもからだも暖かな日々を過ごしていただけるよう取り組んでいくぞ!と宣言します。』
さて、今回のコラムでは、そのような宣言を支える知識・技術・態度の学びを日々続けているわかば職員の活動について紹介させていただきます。 11月6日、コロナ禍以前には年1回の恒例行事だった院内学会が久々に開かれました。 わかば祭と同様3年ぶりの開催、密回避のため会場参加とオンライン参加のハイブリッド形式がとられました。例年であれば、学会後に新年会になだれ込む、厳しくも楽しい日であるはずなのですが、お楽しみ会の方はまだ開けません。患者さんの為に、また自己実現の為にも、普段から学習に励んでいる職員にとって、この院内学会は特別な場です。念入りな準備のもと以下の6つの演題が発表され、多くの職員が聴講しました。
(1)2階病棟退院支援の実践と振り返り・病棟看護師
(2)高次脳機能障害のあるパーキンソン病に対する認知行動療法の効果・作業療法士
(3)北斗わかば病院の地域における役割の推移・医療ソーシャルワーカー
(4)外来院内処方箋導入の効果・薬剤師
(5)在宅での人生会議の取り組み・ 訪問看護師
(6)手指衛生サーベイランス強化の取り組み・病棟看護師
いずれも公の学会発表に見劣りしない立派な内容でした。 発表後に杉本院長より総評があり、さらに聴講職員皆の投票で、訪問看護師による《在宅療養での人生会議アドバンス・ケア・プランニングの考察》が優秀演題に選ばれました。発表職員にとっては自分の学習を錬磨する場として、聴講職員にとっては新たな知識を吸収し学習意欲を向上させる場として、これからも院内学会が続くこと、またその結果として患者さんの入院生活がより良きものとなることを願います。
コラム最後に、作業療法士発表のパーキンソン病に対する認知行動療法について触れます。 認知行動療法とは「認知・行動・感情・身体は相互に密接に関係し、ひとつの変化は他の三つの変化をもたらすという理解に基づいて、不快な感情や身体症状を軽減する為に認知及び行動の面から働きかける精神療法の一種」です。 患者さんの気持ちが大きく動揺したり辛くなったりした時に、患者さんの頭に浮かんでいた考えがどの程度現実と食い違っているかを、療法士が導き手となって患者さんと一緒に検証し、問題解決を助けていく訓練とも言えます。
パーキンソン病診療では非運動症状としての抑うつや不安が、見かけ上の運動症状まで悪化させ、さらに心理症状の悪化を招く場面に遭遇することがよくあります。患者さんを「疾患モデル」とだけ捉え「治癒」を目指すのではなく、全人的に「生物・精神・社会モデル」として捉えて「ケア」をも重視できる療法士が患者さんと伴走してくれることを、慢性疾患診療の場で働く医師として改めて頼もしく思った院内学会の日でした。
神経内科医師 白川 健太郎
- POSTED at 2022年12月08日 (木)