謹んで新年のご挨拶をさせて頂きます。
国内で新型コロナウイルスの流行が始まってから3年が経過しようとしています。院内での感染発生を予防する目的で面会制限にご協力頂きましてありがとうございます。おかげさまで散発的に感染は見られるものの、重症化や集団的な発生には至っておりません。昨年末には人の移動が解禁され、第5類に変更する検討がされ始めておりますが、新たな変異株の新型コロナウイルス感染も拡がっている事から、まだまだ、以前の状態に戻るのには時期尚早と考えており、引き続き感染予防にご協力をお願い致します。
●2022年を振り返って
昨年の最も大きな病院事業としては、電子カルテの導入が挙げられます。国の推進する医療の情報化によりかねてから当院でも電子カルテ導入を検討してきましたが、紙でのやり取りに慣れている事から二の足を踏んでいました。しかし、院内外での多職種連携を進める上で医療情報のデジタル化は利便性が高いと思われ重い腰を上げる事になりました。デジタル化というとスマートに聞こえますが、立ち上げまでにベースとなるデータの打ち込みは人の手で行われ、また、システム構築の為に多数の職員が必死に検討を重ねていった結果2022年9月から従来の紙による診療から電子カルテでの診療に変更となりました。当初は使い方に慣れないため、同じことをするのに今までの1.2倍位の時間が掛かり、外来診療においてもお待たせする時間が長くなってしまったりしてご迷惑をお掛けしましたが、これまでカルテを見に行ったり、担当に聞いたりしなければならなかった情報が容易に見れるようになり情報共有という観点からは導入して良かったと思います。
個人的なニュースとしては、昨年2月に自分自身が体調を崩し、短期間ではありますが入院療養を経験いたしました。周囲の方々からは、「医者の不養生」、と決まり文句を言われ、確かにその通りなのですが大変ご迷惑とご心配をお掛け致しました。多くの方々にフォローして頂くことでようやく体調が戻り診療においても元のようにできる様になってきました。医療の提供者から提供される側になった事で経験したことを今後の診療に役立たせなければ、とも思いました。
●2023年を迎えて
前述しましたように昨年2月に入院療養を経験した際、新型コロナウイルス感染による面会禁止が当たり前のように行われておりました。その為、誰とも話すこともなく、テレビを見ても面白くもなく、持って行った書籍も読む気にならず、窓の外を眺める時間ばかりを過ごしました。そんな時、回診に来る医師や検温に来る看護師さんと数分話すだけでも気が紛れた事を覚えております。また、退院後に家族や友人と会い、病院に戻って来た時には、ようやく自分の存在を確認できたように思え安心した事を覚えております。
この経験から、自分の存在を確認できるのは他人がいて初めてできるのではないかと考えました。長期間入院療養を余儀なくされている方にとって、ご家族との面会ができない事は、寂しさだけでなく、自分の存在を確認する術を奪ってしまうことになるのではないかと思われ、今後もご家族との面会に関しては安全を確保しながら継続していかなくてはならないと思っております。また、医療・介護の提供者である我々は、専門職としても敏感な目を持ちながら、且つ、安心感を届けられるような「気遣い」をする様に心掛けていく事が大切だと思います。また、地域医療・難病医療に携わる当法人として、高齢者が増加し、神経難病罹病者が増加しても住み慣れた地域で過ごせるように近隣の医療機関や介護関連施設などと緊密な情報共有をするようにしていきたいと思います。
以上で、新年のご挨拶とさせて頂きます。2023年が皆様にとって素晴らしい一年になる事を心よりお祈り申し上げます。
理事長・病院長 杉本昌宏
- POSTED at 2023年01月18日 (水)