新年のご挨拶 理事長・病院長 杉本 昌宏
新年あけましておめでとうございます。
2021年が皆様にとって素晴らしい一年になる事を心よりお祈りし申し上げます。
年頭にあたり当法人を代表致しましてご挨拶申し上げます。
まずは、新型コロナウイルスの院内での感染発生を予防する目的で面会制限を設けさせて頂いております。幸い院内での感染は発生しておりませんが、患者さんご本人やご家族におかれましては、この様な強硬手段に対しての御理解をして頂き、会えない不安を我慢して頂くなど、多大な御協力をして頂き大変感謝しております。
●2020年を振り返って
2019年末に他国で報じられた新型感染症のニュースを見ながら、拡がりの不安を感じつつも他人事のように感じたのを覚えています。
それが2020年1月になると日本での第一例目の感染者のニュースが報じられ、いよいよ日本でも感染拡大が始まったと思うのと同時に、この頃は、新型コロナ感染といっても単に風邪のウイルス位に考えていました。しかし、その後、感染が日本だけでなく世界中に急激に拡がり、重症化率の高さや封じ込めの為に強硬手段をとっている国々のニュースを見るたびに、治療薬もワクチンもない状態でどのように対抗していくのかが全く見えない状態となってしまいました。マスク着用や手指消毒の徹底だけでなく、緊急事態宣言が発令などにより、一時は何とか封じ込めたかのように思われましたが、2020年末になっても感染拡大は更に勢いを増している状態です。
新型コロナウイルス感染拡大は、人と社会との関係も変え、人と人の距離を遠ざけるだけでなく、人と集団や人と社会との距離も遠ざけました。一方で通信機器を用いたコミュニケーション方法の発達により、人と直接会わなくても物事が進むようになり、社会情勢は今後も、この「オンライン」、「リモート」といった新たな手段に慣れ、発展させていく方向を示しています。医療の世界でもこの通信機器を利用する事で様々な恩恵が有ります。患者さんにとっては、通院が大変な方が簡便に受診ができるようになったり、また、当院でも以前から計画をしていた入院患者さんの遠距離のご家族とのオンライン面会も可能となりました。
●2021年に向けて
人工知能を利用した診療や、通信機器を用いた診療は有益である事は理解しているものの、医療者と患者の関係性が希薄になるような感じがして、私個人としては馴染まない気がしています。また、昨年は新型コロナウイルス感染の報道に紛れてしましましたが、難病の方の自殺ほう助のニュースなど、今一度、医療・介護の原点や倫理を見直していく事が必要と考えております。
~医は仁術なり~
有名な言葉ではありますが、既に死語となってしまっているのか、医療のドラマなどで聞かれる位で、最近の医療・介護の現場では聞かなくなった気がしています。しかし、医療・介護に関わる者であれば、この言葉を今一度、理解・意識して実践していきたいと思います。
貝原益軒の養生訓[正徳三年(一七一三)]では、
「医は仁術なり.仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし.わが身の利養を専ら志すべからず.天地のうみそだて給える人をすくいたすけ、萬民の生死をつかさどる術なれば、医を民の司命という、きわめて大事の職分なり」
「医となるならば君子医となるべし~、君子医は人のためにす.人を救うの志専一なる也.~医は仁術なり.人を救うを以て志とすべし.~人を救うに志なくして、ただ身の利養を以て志とするは、是わがためにする小人医なり.医は病者を救わんための術なれば、病家の貴賤貧富の隔てなく、心を尽くして病を治すべし.病家よりまねかば、貴賤をわかたず、はやく行くべし.遅々すべからず.人の命は至りて重し、病人をおろそかにすべからず」
~五感を大切にする~
五感とは、「視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚」といった外界からの刺激に対して人が察知できる感覚の事を指します。療養生活においては、これらの刺激が少なくなる事から、脳機能の低下がさらに進行していく可能性も考えられます。
これまでも病棟・介護スタッフやリハビリスタッフも、ユマニチュードを学習したり、アロマオイルでのマッサージなどの手法を取り入れたりしております。新型コロナウイルスの感染予防の為に、これまで行っていた病棟・病院・施設でのイベントも昨年はかなり減らさざるを得ませんでしたが、今年は新型コロナウイルス感染が終息して、これまで以上に五感を刺激していけるようにして行きたいと思います。
我々にとって、関わる方々から、“ありがとう”、“ありがたいね”といった感謝の意を頂けることが最高の報酬と思います。より多くの方々から感謝していただけるように、「自分たちでなければできない事」、「やらなくてはならない事」を見定め、少しでも皆様のお役に立てるよう前進していく集団でありたいと思います。
以上で、新年のご挨拶とさせて頂きます。
理事長・病院長 杉本昌宏
- POSTED at 2021年01月06日 (水)