充実した設備と専門スタッフで、患者さんの暮らしを多方面からサポートします
医療法人社団 三誠会 北斗わかば病院
病院長
杉本 昌宏(すぎもと まさひろ)先生
ドクターからのメッセージ
入院と外来の両面からパーキンソン病患者さんをサポート
当院は、主に慢性期の患者さんを対象とした療養型施設として2005年に開院しました。142床の病床を有し、神経内科を中心に内科、整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科などを標榜しています。静岡の浜北地区やその周囲に入院と外来の両面から神経難病患者をサポートできる施設が少ないという事情もあり、県内の多くのパーキンソン病患者さんにご利用いただいています。現在は入院で約50人、外来で約70人のパーキンソン病患者さんを診療しています。
パーキンソン病以外に筋萎縮性側索硬化症や多系統萎縮症といった神経難病の診療にも力を入れており、診断~寿命を全うするまで、主治医が変わることなく患者さんをサポートすることができます。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を40人以上擁し、リハビリテーション体制も充実しています。また、一時的に患者さんをお引き受けするレスパイト入院に対応しており、ご家族のリフレッシュなどの際に活用して頂いたりと地域に根差した医療貢献を目指しています。
服薬方法の調整によって症状をコントロール
パーキンソン病の症状は運動症状、運動合併症、非運動症状の3つに大きく分けられます。運動症状としては振戦(手や足がふるえる)、筋強剛(筋肉がこわばる)、寡動(動きが鈍くなる)、姿勢反射障害(身体のバランスを保ちにくく、転びやすくなる)の4大症状があり、L-ドパ合剤という薬を中心に治療を進めます。治療開始当初は薬がよく効き、症状が安定した「ハネムーン期」と呼ばれる時期を過ごすことが期待できます。
しかし、治療開始から5~8年ほど経過すると、ウェアリング・オフ現象(薬の効いている時間が短くなり、1日のなかで症状の変動が大きくなる)やジスキネジア(薬が効きすぎて身体が勝手に動いてしまう)といった運動合併症が生じやすくなります。これらに対しては1回の投与量を減らし、その分、服薬回数を多くする多分割投与や、L-ドパ合剤の作用を補助する薬などを組み合わせて改善を試みます。当院では診療部門と薬剤部門が密接に連携し、十分な管理のもとで入院患者さんへの多分割投与も行っており、よりベストな症状のコントロールにつなげています。
非運動症状は、便秘、嗅覚低下(においがわかりづらくなる)、起立性低血圧(立ちくらみ)、うつ、睡眠障害、頻尿などのさまざまな症状があります。これらは運動症状が出始める10年ほど前から現れることがあり、早期発見のサインとしても注目されています。また、病気が進行すると、買いあさり、むちゃ食い、病的賭博、性欲亢進などの問題行動が生じる衝動制御障害や、幻覚・妄想、認知機能障害がみられることもあります。これらをパーキンソン病の一症状として捉え、適切に対応することが大切です。
新しいリハビリテーションプログラムを導入
L-ドパ合剤などの薬による治療と並んで重要なのがリハビリテーションです。パーキンソン病の患者さんは家のなかに閉じこもりがちになり、身体を動かす機会が減少します。その結果、病気によってではなく身体能力の低下によって日常生活に支障をきたしてしまうことがあるのは非常に残念なことです。患者さんには、できるだけ外出の機会をつくるようにとお話ししています。
また、当院では運動療法を積極的に取り入れており、2016年秋には米国で開発されたLSVT®(Lee Silverman Voice Treatment)というリハビリテーションプログラムを導入しました。これはパーキンソン病に特化したリハビリプログラムで、認定を受けた専門のセラピストが、小さくなりがちな患者さんの動きをできるだけ大きくするための多彩なメニューを短期集中的に提供します。薬では対応が難しい姿勢異常の改善や小声などに有効とされております。
自宅でできる運動療法としては、床の上にまっすぐ仰向けに寝たあと、膝を立て、左右に繰り返し倒すという体幹運動をおすすめしています。パーキンソン病では背骨周辺の筋肉をはじめ、身体の中心部分の筋肉が固くなっていることが多いため、これを伸ばす動作はとても効果的です。また、身体を伸ばす動きがたくさん含まれているラジオ体操もおすすめです。転倒の可能性がある方は、椅子に座って身体を反ったりねじったりするだけでも症状改善の効果が期待できます。
主治医との信頼関係のもと、パーキンソン病と上手に付き合おう
パーキンソン病は進行性の病気であり、根治に導く治療法は今のところありません。しかし私たち専門医は、症状を日常生活に支障のないレベルまで改善させるため、そして進行を可能な限り遅らせるため、患者さんにとってベストな治療法を模索しています。また、その実現のための選択肢は数多く用意されています。治療は、医療者と患者さんが手を取り合わなければ成功しません。主治医との信頼関係のもと、パーキンソン病と上手に付き合っていくことが、より快適な日常生活につながるのです。
- POSTED at 2016年12月26日 (月)