当院では「その人らしさ」を大切にした関わりを心がけています。
人は老いていくことで日常生活の中に行ないづらいことが増えてきます。自分の足で歩いてトイレに行く、自分の家の場所を覚えて帰ることができるなど今まで当たり前にできていたことができなくなってきます。では今まで当たり前にできていたことが出来なくなってしまったとき、その人の価値は低くなってしまうのでしょうか?私たちは決してそんなことはないと考えています。
認知症をもつ方を一律にとらえるのではなく、あくまでも一人の“人”として尊重してケアをしていくことが大切ではないかと思います。どんな人にも個性があり、これまでの人生や人間関係など、様々な要素を踏まえてケアを行っていくことで、できないことが増えていく中でもその人がその人らしい生活を送ることが出来る。そのことこそQOL(生活の質)の向上において一番価値があるのではないかと考えています。
以下に認知症に関しての具体的な取り組みを紹介していきます。
ライフヒストリーカルテとは、作業療法士の田中寛之氏らによって開発されたものです。作業療法士が重要と考えているナラティブ(今までの人生の流れ)な視点を他医療・介護職への理解を促進させるためのツールとして、高齢患者・利用者の生活史を簡便に把握できるライフヒストリーカルテを使っています。
今までどんな人生を歩んできたのかを把握し、その人らしさを職員の中で共有できるように使っています。当院では認知症の方だけでなく神経難病の方にも使わせていただいています。
回想法とは、昔の懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い家庭用品などを見たり、触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う一種の心理療法です。1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱し、認知症の方へのアプロ―チとして注目されています。
当院では昔の思い出を一緒に振り返り、みんなで思い出を共有できるにしています。そうすることで患者様のその人らしさを知ることに繋がり、普段の会話の中でも親しみを持って接することが行ないやすくなっています。
また回想法は、「思い出を振り返る過程」「思い出を語る過程」「思い出を共有する過程」に分けられ、その過程で心地よい他者交流が行なわれ、脳の活性化や表情の回復,孤独感の軽減 自尊感情の増加に繋がると言われています。
作業療法とは作業に焦点を当てたリハビリテーションです。日常生活動作、園芸、料理、麻雀、編み物、楽器の演奏、ゲーム、外出などその人にとって大切な作業を行なえるように関わっています。
この写真は患者さんと一緒に園芸で野菜を育て、収穫した野菜を使って料理をしている時の写真です。元々農業に携われていた方に教わりながら野菜を育て、主婦の方々に料理を教わりながら作っています。できないことが増えてくる中で活躍できる場があるということが大切になってくるのではないかと思っています。脳の機能としても交流を図ることや昔を思い出すことで認知機能の維持向上が期待できます。
認知症の方をメインに病院内でデイケアを実施しています。カラオケ、フラワーアレンジメント、レクリエーション、映画鑑賞など毎日色々な活動を行っています。
月に2回病院内でカフェを開催しています。コーヒーやココアなどのドリンクやお菓子を召し上がって頂き患者様同士やご家族様との時間を楽しんで頂いています。季節に応じてクリームソーダ―、お汁粉、甘酒等の特別メニューもご用意しています。